『切断』/あおい満月
 
こんな夢を見た
わたしはぼたぼたと
血を滴らせながら
部屋中を歩き回っている
わたしには、
左手がないのだ
鋭い刃物ですぱんと切られ
血が止まらない

母親はいつものように
居間でラジオを聴きながらお茶を啜っている

お母さん、
あたしの左手知らない?

母は見向きもせずに
押し入れに全部ぶちこんだわよ、
という

すぐさま押し入れを開けると
そこには夥しい数の左手が
こぼれんばかりに溢れている
どれもみんなわたしのものだが、
みんな違うものばかり

赤や青や黒のマニキュアの指をもつ手や
赤い蛇のタトゥー
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