壁/川上凌
ただ、そのおばちゃんの言葉が、やけに鋭利で冷たく聞こえた。
おばちゃんたちもまた、「障害者」というレッテルを彼女に貼り付けたのだ。
彼らと自分との間に一本の線を刻み付けたのだ。
障害者と健常者、ではなく人と人、としてフラットな立場で過ごせるようになったらどんなに良いだろう。
パラリンピックも、障がい者割引も、テレビで特集されるお涙頂戴も、
ぜんぶ、彼らが「障がい者であること」を前提に成り立っている。
彼らは障がい者で在る前に、ひとりの、“人”なのだ。
ひとりの人間として、同じスタートラインに立って、彼らと向き合ってみたら、きっとわたしよりも誰よりも、彼らの心は自由だろう。
料金を払って降車すると、外は相変わらずのどしゃぶりだった。
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