つばめよ、つばめ/そらの珊瑚
 
引越しの朝は
言い換えれば
旅立ちの朝

窓を開ければ梨畑が広がる小さな部屋であった
季節が巡れば白い花が再び咲くことだろう
春の雪のように
ほんの仮住まいといえ
思い返せば数年の愛着があり
一抹のさみしさはあるけれども
きっと忙しさが忘れさせてくれる
季節が巡れば甘い実を再び結ぶことだろう
秋の玉(ぎょく)のように

スワロースワローリトルスワロー
君の魂がめざしてとんでいくところは
南の国なんかじゃなかった
もちろん凍えた北の国でもなく
壊れた王子の魂のゆくところ

いらない荷物は捨てていこう
お気に入りの毛布と
一杯のコーヒーを淹れる
朝のためのカップがあればいい
いつか魂だけになったなら
それさえも捨てていこう
そこには朝と夜の境界線さえないと
つばめは言う
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