ペットショップで/そらの珊瑚
 
日曜日 うっかりペットショップをのぞいてしまう
生まれたばかりのかわいい仔犬が
ガラス越しにじっとわたしをみつめてくる
さっきまで泣いていたかのように黒い瞳が濡れている
この人はここから連れ出してくれる人だろうかと
わたしもまた値踏みされている

少し大きくなった柴犬は
赤い文字で値引きされている
命の値段
ここでは命は商品なのだ
スーパーで林檎を買うように
気軽にはいかないといえども
原理は一緒である
生産者がいて商人がいて消費者がいる
売れ残ったあとに この子がたどりつく現実
それはしなびた林檎が最後にどうなるのかと同じであろう
命の値段
私の値段はいくらで
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