遺書にはならない足跡 2/セグメント
 
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 「彼女」は自分のことを「私」と言っている時もあった。こういった事象に整合性はないのだろうか。良く分からない。
 「彼女」から私が私に戻った時は唐突で、急にはっと目が覚めるような感じであった。それまでの記憶が断片的に脳内に存在し、私は一体何ということを恋人に言ってしまったのだろうと後悔の念で一杯になった。すぐに謝ったが、恋人は私を見る目で私を見てはいなかった。私ではない人間を見る目で私を見ていた。当然のことと思う。私本人でさえ、あれは私ではないという認識を以てそこにいたのだから。
 また、だからこそか、恋人に対し、心からの謝罪というものが出来なかった。何故なら、私ではない人間の責に
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