答えがない/蒼木りん
 
白い犬は死んでしまった

白い家の二階の窓から
猫が外を見ている
家からは出たことがなく
毎日
工事現場の音や
散歩する人や犬や
通りすぎる車や
ときどき来る鳥の影に
なんとなく
触りたいと思っている

どうして
この家の人と同じ『言葉』が
喋れないんだろう
どこからか
微かに
声が聞こえるのに
それが誰だかわからない

白い犬とは仲良くなれなかった

ただ
もう追いかけられることも
吠えられることもない
家のなかを少し自由に歩けるようになった

もっと遊んでほしい
もっとわくわくしたい
風に吹かれてみたい

君は『だれ?』


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