仕事/ブライアン
 
らす光は眩しかった。観光客らしい人が真下からデジカメを向けていた。道の両側には居酒屋が軒を並べている。
 ホテルにチェックインして、パソコンの電源を入れる。メールを確認する。返信をする。携帯電話を充電する。妻からの連絡はない。頭の中で彼女の名前を呼んでみる。彼女は台所から眉間にしわを寄せ、何、と聞く。部屋に付けられた明かりが、彼女を照らしている。彼女は居間までやってきたりはしない。早くご飯の準備して、と伝える。
 ホテルの外からはガールズバーの呼び込みの女性の声がする。腕を組んで歩く男女の姿が見える。街には光が満ちている。眩しい。その明かりは本を読むにも眩しすぎる。光は言葉の輪郭を失わせる。涙腺が震える。そばにいるのが誰かわかっている。気休めかもしれない。携帯電話を起動させる。着信もメールもない。携帯電話の光は眠りにつくのにちょうどいい。
 
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