血の太陽/阿ト理恵
 
くぎこちない形でFの肩を引き寄せていた。そして、抱きしめた。お互いの細い骨がぶつかる音が雷雨の中へ溶けていった。
どのくらいの時がたったのだろう。
瞳を閉じたわたしにはFの心臓の音しか聴こえない。
「痛いよ!」
Fの声で、わたしは、はっとして目を開け、Fから身体を離した。Fの剥き出しの白い肩にわたしの爪が食い込んでいたのだ。うっすら血が滲んでいた。
「舐めてよ」とFがわたしの耳を噛みながら囁く。わたしは、云われたまま、恐る恐る舐めた。
「どんな味?」
と云いながら、血のついたわたしの唇をFは舐めてきた。

雨は止んでいた。





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