つぶて/はるな
 
のだ、と思う私はいまは礫(つぶて)。

信じられない、と言う声がするまで、私も信じられなかった。そうしてあなたが信じられない、と驚いてみせたあとで同じ気持だったし、同じ気持になったときにはもうすでに何もかもは信じられる現実に定着していた。声がそうした。信じられない、と思うことは、何もかも信じられる現実のなかにいるということであった。
そして、ばちばちと転げながら坂を上っている。

あなたにもう会うことはないと言った。あなたは信じられない、と言った。
ほんとうに信じられない、私も思った。
どうしてだろう、と思った。信じられない、と思った。
信じられない、と、もう一度、あなたが言った。

礫(つぶて)になって気が付いてみれば、わたしは一度もその言葉を口に出しては言わなかったのだ。


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