詩なんてかきたくなかった/はるな
詩なんて書きたくなかった。いつも。
文字は感情を超えないし、文章は遠すぎる。詩は、いつも、わたしの心に寄りすぎる。それだけが必要すぎて、ほかの誰にも伝えられない。わたしに近すぎて、誰にも届かない。思っているようには。
尊いのは、あらゆるものに共通している無価値性だけだ。わたしも、あなたも、文字も、夜も、光も、飢えも、屋根も、熱も、意味も、なにもかも、あらゆるものの存在は、同じように無価値だ。同じように無価値で、それなのに、わたしにはあなただけが愛しい。そのことだけが尊く、ふるえるほどなのに、ひとつも伝えられずに、こんな気持ちのままで、立ち尽くして、空の色を、忘れてしまう。
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