加害者と被害者/桐ヶ谷忍
決め付けるのは良くない事だと返される事も
承知なのだ。
そしてそれが、あなたを害し続ける言い訳になってしまっている事も
また承知なのだ。
皮膚の盛り上がった傷跡をじっと眺める。
私は、冷静だ。冷静に思考していると思っている。
その上で、この傷があと何センチか深ければ、このように
堂々巡りの問いを続ける事もなかったろうに、と考える。
あの時、狂っていると自覚出来なかったあの時、なぜ私は
私にとどめを刺さなかったのだ。
今の、正常な私では、わが身を傷つける事は怖くて出来ない。
死ぬのが恐ろしい。
だから、あなたに謝り続けねばならない。あなたにとっての私は、
まったきの加害者であるから。
被害者とは、あなただ。
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