石の気分で/石川敬大
柄のとれたモップの毛先から滴りおちてくるのは
汚れた雨だれ
きっと
津波だってそうだね
津波なんて言葉ききたくもないけどね
月なみだってそうだよ
邪気がないからやっかいだ
西方浄土から
黒い雲がおしよせてくる
ああ、もう
すっかり角ゴシックの
ゴツゴツした石になった気分
ふいにたぶんさり気なく踝のあたり
耳もとでささやくように
ハデな
波状になった紙ではなく
たやすくにぎり潰せない皮革みたいなものとして
メランコリーは居つくにちがいない
*
ファブリーズを撒いてもとれないの
と、
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