手慰み/MOJO
 
 十五歳のころ、文学なんてものは、自分には関係のない分野だと思っていた。
 当時、遠藤周作というカソリックを信仰する流行作家が活躍していて、テレビのコマーシャルなどにも出演していた。彼は小説の他に、俗に云う「笑えるエッセイ」も書いていて、その何冊かが生家にあった。親が買ったものだ。読んでみると、ちっとも笑えない。笑えないどころか、腹が立った。遠藤はそのエッセイの中で、学生時代に、自分が、いかに愚鈍であったか、劣等生であったか、繰り返し語っていた。しかしながら、学校での国語の教科書に遠藤の文章が掲載されていて、プロフィールを見ると、慶応大学を卒業し、その後フランスに留学、とあった。「ケ!」、本格の
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