手慰み/MOJO
 
格の劣等生だった私は腹を立てた。小説家などというものは、そうやって、劣等生の味方であるようなふりをして、実は心の底では私たちを小馬鹿にしているのだ。そう思った。
 遠藤は、それらのエッセイの中で、よく自分の文学仲間のことについても書いていた。その中の一人に吉行淳之介がいた。吉行は、売春禁止法が施行される前に、娼窟に遠藤を案内し「これから見本を見せる」と言い、ある娼家の階段を上がって行く。ところが、交渉が上手く運ばなかったのか、娼婦に尻を蹴られ、階段から転げ落ちてきたという。私は、このエピソードに好意的な興味を持った。本屋で吉行のエッセイを見つけ、買い求めた。読んでみると、遠藤のものとは趣が違い、
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