ピエタ/紅月
 
のなかでこまかい泡が粉雪のように舞う、それ
らはすべてそらへむかう、倣いながら、(誰に?)彼岸で、そらを
指さすなんらかの女神に、



凍えるような青い炎が琥珀色をした魚の鱗を舐めるとき、かたられ
た物語が濁った香油となって水面に浮かぶ、物語がかたられるとき
わたしたちの領空には長い雨が降る、わたしたち魚、浸水した教会
の錆びた鐘は定期的に鳴らされるのだった、しかし重厚なしじまの
なかで、絶える、のは音ではなく(じかん)、つかのま、あなたの
うちがわの耳が震えている、ふるえている「ゆぐどらしる」が身を
ふるわすたび細かい泡々のsnow glode、にいっぽんの大樹が根をお
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