真夏の雪、地蔵骨峠の夢/はるな
 
くための菓子屋なのだ。
勝手なことを、勝手なことをと憤りながらもやっと衰えてきた炎へ、これでもかこれでもかと水と雪とを交互にかけ続けていると、生き物が息絶えるようにふらふらと頼りのなくなった炎のなかにぼんやりと彼がうつっている。
そんなはずはないと思う、背後から家族と夫が私を励ましている。「うちの娘です!」「そして僕の女房です!」炎はまだ消えきらないのに、胴上げの準備をみんながはじめている。
勝手なことを、勝手なことを、そんなはずはないのに。思いながら、ふと凍える手に気づく。地蔵骨からつめたい水を触り続けてきた素手はぱんぱんにひび割れて凍ってしまった。

最後までやらないと、帰られないからね。

下足番の声が真上から響いてくるが、凍えた掌を目のまえの炎で温めてやりたくてしようがない。













(という夢を見たのが昨日)。
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