真夏の雪、地蔵骨峠の夢/はるな
 
人だかりが厚く、繁盛している。
「せっかくだから食べていきましょう」母が言えば、「そうすべきだろうな。」と父が威厳たっぷりにうなずく。車から降りるときに夫が手を差し伸べてくれたが、すんでのところで間に合わず、隙間へすべりこんでしまった。夫も、祖母も、父も母も姉も妹も気づかず、うどん屋へ入っていく。
いましかない。そう思って、走り始めた。
地蔵骨まで登り切れば、何とかなるだろう。
父の黄色いアロハが、だんだんと遠ざかってゆく。

真夏の雪はべたべたと重たく、一歩踏み出すごとにべしゃべしゃと飛び散る。足はあっという間に赤々に霜焼けて、痛みを通り過ぎた。丁度良いので、ハイヒールは脱ぎ捨て、ガ
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