真夏の雪、地蔵骨峠の夢/はるな
つはもう連絡がついている。今向っているそうだよ」。
絶望的な気持の理由は、つまり、私の逢瀬の日だからだ。こんななかでは伝書鳩を放つ隙さえない。雪はおそろしい速度で降り積もる。
「あらあらもう到着」
母が言い、庭へ出ると、ものものしいチェーンを付けたみなれた車が庭へ入ってくる。
「そこにはすずらんが植わっているのに!」
私が悲痛な声を漏らすと、
「構やしないわ。夏の雪ですもの!」と姉と妹が声をそろえる。
「よくわかっているな」と父が満足そうに頷き、一人取り残された気持のまま靴を履く。
と、車から降りた夫が
「ハイ・ヒールを履きなさい。」
と言う。
「歩きにくいわ」
「履きなさ
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