水の時/月乃助
 
る 笑い声のやすらぎの波動が、
少しだけ少年の重荷を かるくする


陸に生きた頃の思い出が、よみがえる
水などなかった世界 


屋上から見あげれば、天空は
確かさをやどす 陸の世界からの誘い
水のなかでは、僕はもう生きていけない


屋上の柵をこえる
光を その美しく/清らかに射しこむ天にむかって 泳ぎはじめた
ひとかき ひとかき 力のがきり、
水に生きた 古生物たちが
陸をめざしたように
陸への 回帰に
胸をふくらませ・・・            その刹那


水が一瞬に消え去った
少年は、まっさかさまに落ちて行く
古代魚たちの 笑い声
あい
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