不安不安/……とある蛙
乞食
たった一杯のコーヒーを飲めずにのたうち回っている老人
その瞳の中には険しい眼差しとオドオドした炎のちらつき
言葉を無くした老人は襤褸を纏って道を彷徨う
ぶつぶつ世間への呪詛なのか
何やら言葉を呟きながら
聞こえるようで聞こえない
偏見に対する恨み辛み
皮膚は赤黒く爛れていていて、異臭を放って
道行く者皆顔を背け、存在しない者として認識を拒絶する
襤褸は漂う匂いと共に彷徨う、
道の中央を物狂いした老人が彷徨う
係累縁者に老人の存在は拒絶され
老人に視点はない。瞳の奧はくすんだ鳶色
哀しげではなく、不安の目の奧
素っ頓狂な声を上げ、街角から街角へ
前歯二
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