貯金の音 /服部 剛
 
茅ヶ崎駅近くのライブハウスにて 
カウンターに並んで座った 
詩友の欣(きん)ちゃんは、店員の女の子に話しかけた 

「名前、なんてゆうの?」 
「かれんです、名前負けしてるんですぅ」 

その時、私は 
酒を3口で火照った頬のまま 
瞳をきりっと前に向け 
2人の会話に割って、入った 

「人は名前に向かってゆくのです」 

「おぉ」 
「おぉ」 

「詩人だねぇ・・・」 
「いやいや・・・」 

その数分後、私は 
入場料1500円で1ドリンクの 
チケットを渡し忘れて 
650円のピーチカクテルの御代をすでに 
払ってしまったことに気づいたのだ
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