あの夏/そらの珊瑚
焼けた砂浜を
飛び跳ねるようにして
海へとかけてゆくこども
裸足の裏がじりじりと焦げる
ポップコーンが無鉄砲にはじけて白い入道雲になる
どこまでいってもたどりつけない水平線
追えばどこまでも逃げていく
地球は丸いって知ったのはつい昨日のことだった
疑問符は砂粒くらい在って
用意された答えは逃げ水のようだと知った
三角の波を越えて沖のロープまで泳いでいけば
とうに足のつかない海の底に
ひんやりとした冷たい手があって
何かをつかまえようと浮遊している
ぷかぷか浮いている板の上でしばし休憩する
ふりむけば海岸(おか)があんなに遠い
おもちゃみたいな人とパラソル
乱反射する砂粒 蜃気楼
信じられないくらい
遠くにきてしまった
いつのまにか
ふりむけば何もかもがこんなに遠い
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