8号館 〜遠ざかれない日々によせて〜/Rin.
 
ーダはじけて積もる改行


褐色の角砂糖だけ掘り出していたらつめたくなったRe:メール


ペチュニアを枯らしたことの証明に窓辺に藍の砂時計おく


綴るほど素直はたやすくない ゆがむビニール傘をいろどるネオン


たぶん白い花だったはず隣室のいつしか香りの消えた鉢植え


帰りたくないひとも帰れないひとも環状線に揺られて眠る


公園の大きな地球儀いつまでも回した手には錆びた夕焼け


さよならがかわいて白い朝がくる君をこわした夢のあとから


もうなにもかもわからない東から川をくだって薄れゆく雲


ひとりぶんのらせん階段ゆるやかに呼吸している巻貝のよう


どのときの涙も同じしおあじと気づけば海の午後は傾く


六千の音あつめればひだまりに扉はうかぶ8号館の


廃校舎めぐる緑の金網にまだ約束は結ばれたまま








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