ぱたぱた/しべ
 
喋った記憶を遡ると
人の中で泳いでる

かたちはおそらく金魚で
よく冷たい水に潜る
ぷくぷくと泡が声に変わる
耳には届かない

書いて書いて書きなぐって
でも読めないので泳ぐ
紙は水槽の横でキラキラしている
メールは魚より速い
でもときどきどこかで死ぬ
紙縒だ

亡骸を見ると喉が渇く
冷たい茶の中に落としたら
赤く滲んでまき散らし
泳ぐ泳ぐ

風鈴が見える

夏のあいだは
あれと扇風機がよく話している
いまは萎んだ朝顔の事で
カタカタ笑っている
てきとーな奴らだ


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