風呂場の鏡/桐ヶ谷忍
 

いい加減、ポンプ1回の分量で済ませられる程度に髪の毛を
切りたいと思いながら、また丁寧に泡だらけの頭をそそぐ。
それからリンスのポンプを5回押して、またシャワー。

そうして、顔を洗おうとして、また正面の鏡に目をやる。
曇っている。

私はまたシャワーを鏡に向けて流した。
無表情の顔が女がまた、気怠げにこちらを見返している。

無表情でいる事。
それは長年の習性が、とうとう習性ではなく本物になって
しまったという事だった。



近頃はいじめ自殺問題が今更のように騒がれている。
かくいう私もまた、合計15年間いじめを受け、死はいつも
甘美な救いのように憧れ
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