盆送り/そらの珊瑚
おばあちゃんが言った
ふりかえっちゃいけないよ
茄子の牛に乗って空へ帰る人たちを
見てはいけないと言った
だってさみしくなるだろう
送る方も
送られる方も、さ
藁を燃やして送り火をたく
子どもだった私は
いいつけを破ってこっそりふりかえる
薄闇に
白い煙がぼんやりと立ち上っているだけで
さみしくなんてならなかった
砂利道に咲いた鶏冠花
家路への目印かのような赤色を灯す
逝く夏を惜しむかのように
ひぐらしがなく
おばあちゃんを見送ってから
もう何十年もたつ
ふりかえってみたくなる
逢えるんじゃないかと思って
ふりかえってみたくなる
さみしくなってもいいから、さ
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