戦闘機が急降下してきた/
天野茂典
私は母に背負われながら
用水路の道をあるいていた
前方から突然
戦闘機が急降下してきた
母は伏せた
私を庇って
糸を縫合するように
弾はぼくらをおそったが
わずかに弾道はそれた
ぼくたちは親戚の家を
尋ねたのだった
どんな野菜でもかまわない
腹が少しでも満ちるならば
無差別攻撃にも耐えながら
ぼくは栄養失調のこどもだった
今でもあの用水量の豊かさを忘れたことがない
母もよく耐えたものである
二度と戦闘機はもどってこなかった
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