黄昏待ち/そらの珊瑚
おひさまに干されたふとんは
懐かしい匂いがする
平屋建ての木造家屋
屋根より高く育ったヒマワリ
リュウノヒゲにふちどられた細い通路
赤いバラのアーチでは
テントウムシがアブラムシを食べていた
銀色のトカゲの背がぎらりとひるがえる
熟れすぎたイチジクは
川べりに落ちてアリが群がる
空に吹き上がる圧縮された雲
海を渡ってきた湿り気を帯びた風
絵を描く父とポニーテールの母は
今の私より
ずっと若い
西日があたると
世界は黄金色になる
黒い影を漂白するこもれびのパズル
木陰に置かれた乳母車の中で
私は夢の中
あれからずっと黄昏を待っている
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