世界へ/nick
 
あたたかい場所で生まれた君
里から街へ手帳を埋めて
愛に潜り込んで鍵を渡して
拾ったものは忘れてしまう

ためらいの扉
完全をめざす計画と
雲ひとつない青空の頂点
硬直した博士の指

そういったものは全部
君をばらばらにさらってゆく
この部屋にだけは来ないで、
夜と昼がまざった部屋に

祝福の音を重ね
星に照らされ眠る日々は
壁の染みを少しずつ
濃くしていき、喉がいたい

ただ静かな砂の上に
集めたものを並べてみる
きれいな声で君を呼んでいる
そして時間をかけず沈んでいく

周りを見てはいけない
引き寄せてしまう
影と影と影と影
君のかたちをしているの

返せ

涼しくって重い風にオレンジ色ひとひら
君だけの大地に雫が染み込んだ
戻る   Point(1)