魂への修辞/高原漣
名を持たない者たちに識別コード(なまえ)を与えよ
壜のなかはくすぶった魂でいっぱいだ
すし詰めといってもいい。
あたかも薬室(チャンバー)のように
圧力が上がっていくのかもしれない
その蓋を開けてくれ。
遊底は滑る、列車はホームに滑りこむ
轟音を立てて……
軋む車輪の音、金臭い風が構内を満たす
ギイギイと鳴っているのははたして車輪なのか
それとも……
さて列車に点灯夫が乗車する。
遠く遠くに仕事に行くのだろう
石炭袋をいつも担いでいるような顔をしている
彼の人生は果たして幸福であったろうか?いや、それは誰にもわかるまい
疑うことを知らなかった魂たちが
壜の底で
羽化しそこねた蝉かと見まごう輝きで
見よ、
見よ、刮目して
たましいよ、うなり吼えよ
耳にベルの音が叩きつけられ汽車は出てゆく大地を割って
シュウシュウシュウ……蒸気で悲鳴を上げながら走ってゆく
あなたの魂に安らぎあれ
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