ふさの国の大仏/……とある蛙
奈良の大仏 ふさの国
ならは 国の意
奈良の都は遠い過去
盧舎那仏にはほど遠い
寂(すた)れた山里の如来立像
並木の参道 山桜
古木巨木のスダジイ、銀杏
木肌と瘤の古色な造形
その杉木立の隙間
涼しい風が吹き抜ける
参道を抜けた突き当たり
レジスタンスな将門が
祈る浄土への道行きの
その先にいる悟った仏陀
如来立像が佇み見下ろす
御堂も御殿もありはしない
静かに佇み 高みから
等身大の如来像
思いの掘られた台座から
優しく見下ろす如来像
光背に杉の巨木背負い
右に山桜の古木
左にスダジイの巨木
入ってすぐに巨大な銀杏
樹々の枝から生い重なる葉が
天蓋となり
拝み手を合わせる人々を
夏の日差しから守り通す
寂(すた)れたその地の大仏は
言葉不足の悲しみを
言葉にできない悲しみを
思いの中で受け入れて
拝み、手を合わせる人々の
不器用な苦しみを癒すのです
不器用な苦しみを癒すのです
盧舎那仏とは違う手で
盧舎那仏より低い眼で
不器用な苦しみを癒すのです。
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