根のこと/はるな
てくれたし、抱いてくれた。いまどこにいるかも知らない。
自分のせいなのだとわかっている。さみしがるのはお門違いなのだ。
でもだからって、いま夫に根を張れば、きっと程度がわからずに絞め殺してしまう。
そんなのって、おかしいよね。と、つぶやいて、夫のうなじを撫でると、こんなにすずしいのに汗がぎらぎら光っている。うす暗い部屋のなかで、しめった生き物がふたり、べつべつに、息をしている。そのときには、もう安心してしまって、わたしも目を閉じているのだ。
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