729/しべ
 
仰ぐも雨雲
風がバタバタ明日の今頃
水の音がじんわり残る

せわしない
水門手前のセキレイが
剃刀ひとすじ
鳴く。鳴く。消える

貧血気味に
その目は前に向く
黄土の砂埃に路線バス
パタパタ白いコンビニ袋
真っ赤な橋の手前には
無数のポタポタ
雨粒

振り返っても見れないわ
廃墟のように
朽ちもしないわ

雨ざらしの工場は
ここから300メートル
左手を上げたあたりに

煙の花束と
夜まで燃えさかる
瓦斯の海に溺れて
泣いて

雨は強く
夏は長く


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