とうもろこしを茹でながら/そらの珊瑚
子どもの頃
夏になると
庭に母がとうもろこしを植えた
毎日水やりをするのは
弟と私の仕事だった
「これ、なんていうとうもろこしか知ってる?」
「とうもろこしに名前なんてあるの、おねえちゃん」
「名前っていうか、種類のこと。人間にだって、いろんな種類があるでしょ」
「優しい人とか、そうじゃない人とか?」
「それを言うなら、怖い人でしょ」
弟とは反対言葉クイズで、いつもけんかになる
優しいの反対言葉は優しくない
楽しいの反対は楽しくない
と弟はいう
まだ小学校に上がる前だったから、無理もなかったのだけれど
「このとうもろこしはハニーバンタムって言うんだよ」
「へ
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