手向け 名前だけ知っている/黒ヱ
弐ノ妙
瑞々しさの麒麟と
小童の僕は 思う
たとえ少しでも たとえ儚くとも
長く生きていた方がよかった と
時の鉢の中を
綺麗にでなくとも そこよりもっと
泳いできてほしかった
もし 僕と会えたなら
もし 一緒に泳げたなら
君は 僕の中でも生きられたのに
『 いない、いない、ばあ 』
君も 僕も
お互いを知らないまま 君はいってしまった
神さまは なんと酷なお方だろう
君の名は 幻の獣を借りている
その姿のように
するりと翔けていってしまった
なんと 悲しいではないか
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