世界の絵本/服部 剛
遠い異国の丘にある
旅先の宿で、軋む階段をのぼり
入った部屋の開かれた窓から、身を乗り出し
いちめんの街を見渡す
日々背負っていた
「悩み」という名の重たい荷物が
ここではあまりに小さく見える
やがて夕陽は地平に沈み
ぽつぽつ灯りゆく窓には
家族の影絵
やがてとっぷり夜は更けて
ふっふっと窓のあかりも
消える頃――
そうして夜空の星々が
しんしん奏でる宇宙(そら)の合唱(コーラス)の
響く頃――
あぁ世界は
旅人の小さい掌には
とても収まらない
不思議な地上のメルヘンだ
世の中の、笑と涙の全てを飲みこむ夜の闇で
「今」も生成している
数えきれない人々の幼い寝顔と
明日という、それぞれの夢
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