旅人の涙/服部 剛
「遠い異国の教会で、ステンドグラスの窓か
ら射すまっすぐな虹のひかりの中、人々は
棺に横たわる人に次々と花を置いていく。」
「ノートルダム寺院に腰を下す詩人草野心平
さんの胸底にぎゅりりと何かが突きあがり
いかつい頬からぽたり、一粒滴が落ちた。」
旅の詩集を閉じた後
部屋のラジオから
バッハのG線上の線上のアリアが流れ始める
今頃どうしているだろう――?
一月前、被災地の仮設住宅へ訪問した時
僕等の詩の朗読とヴァイオリン演奏に
ひとすじの糸が頬をつたった、Kさんは
(窓の外の上空からぱら、ぱら、と雨がふる)
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