窓結い/Akari Chika
 
何十年も後
何十年も後の窓に
わたしの姿は映る
泣き腫らした目を 細い指で押さえて
赤い鼻の頭に 午後の光を落として
泣いた理由など忘れてしまった
それは何十年もむかしのはなし
太陽が窓を横切るように
わたしが悲しむ理由も移り変わっていく
葉が枯れるように
木の枝から舞い散るように
わたしの時間はゆっくりと
扉をギシリと軋ませて
見るもの 聞こえるもの押し込めて
招き入れた肖像を
手でやわらかく こねていく
わたしの時間は窓の外
渦巻く空へ立ち昇る
すこし苦しむ胸を撫で
もう大丈夫、とつぶやいた

何十年も後
あなたは両手を広げていた
風の住処に変わっ
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