時の流れ/服部 剛
この部屋の窓からは
雨の降り始めた靄(もや)の向こうに
遥かな山々の緑があり
眼下に一面の畑は広がり
歩道には、レインコートを着た犬と
飼い主が歩調を揃えて、歩いていった
*
昼頃の散歩で、偶然
前の職場の老人ホームの
ボランティアのおばちゃんと
久しぶりに会った
携帯電話の小さい画面で
はいはいする〇歳の周を見せたら
(可愛いねぇ・・・)と
おばちゃんの頬がほころんだ
*
今よりもっと不器用な青年だった僕を
いつも見守ってくれていた
おばちゃんのまなざしを胸に暖め
雨の降りそそぐ窓の外を、眺めている
30分前に歩いていた
レインコートを着た犬と
飼い主がゆっくりと
帰りの道を、歩いていった
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