蜘蛛の糸(性善説)/オノ
 
んな掴まったら、
切れてしまうのも時間の問題だ。」と思いました。
しかし、「いや、こんな罪人どもにも人間じみた心や苦しみがあるに違いない。
ここで蹴落とすのはあまりに可哀想だ。勝手に登らせておこう」と思い直し、
むらがる罪人たちを咎めずにまた糸を登りはじめました。

その途端でございます。
今まで何ともなかった蜘蛛の糸が、カンダタのところからぷつりと切れる
というようなことはなかったものの、罪人たちのあまりの重さに耐えかねて、
極楽の池の縁から糸を垂らしていたお釈迦様が地獄へ真っ逆さまに落ちて
きました。糸につかまっていた罪人たちやカンダタが山積みになって、
ちょうどそのてっぺんへお釈迦様が落ちてきて尻餅をつきました。

お釈迦様は、カンダタの上に座ったまま、言いました。
あなたは、そんな力もないくせに、最初からみんなを救おうとしたから、
自分ひとりすらも救えなかったのです。
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