最終考察あさき 前夜祭 -幸せを謳う詩-/只野亜峰
生きる上での重大なエネルギー源となります。男に捨てられ一人我が子を背負っていかなければならない生活と、先立たれた男の忘れ形見を後生大事に背負っていこうというのでは心理的負荷も桁違いであるでしょう。この記憶の塗り替えは母として生きていかねばならない彼女にとっての重大な生存戦略であったと言えます。
――ふぃるむ は逆さに回り
――二つの笑みを白黒にして 燃やす
――飛び散る灰は 粘土の様に固まり
――後ろに延びた影に散り敷く
――「幸せになるために」
映写機の前半部分で語られた幸せな男女の風景の描写はここで転機を迎えます。フィルムを彼女の記憶を考えると、フィルムが燃える
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)