滑走/中山 マキ
 














相変わらず定まった向きで沈む
僕を含めた人々の群れが
溺れもせずに器用に進む
東京では何処も見慣れた世界

誰かの痕跡が消えていることを知りたければ
インターネットを使えば容易い
趣味趣向も分からない人々が
夜毎死んでいく

心を上手に蝕んでいるのは極端な孤独
過去も未来もやがて分からなくなると
闇に向かって耳をそばだて
悲しみの意味も分からないまま
すすり泣くようになるんだ

力を入れて叩けば砕けてしまう
敢えて拳を握らずとも
姿勢の美しい樹木の心も
背骨が虹のように折れ曲がった老女も

汗を拭い呟く言葉は
風の音より儚く弱いけれど
口にすれば1人ぐらいは振り返るだろうか
関心と無関心が入り混じった
難しい瞳で

信号が青から赤になる寸前
鳴り響く受話器を上げる瞬間
眠りから覚める一瞬
この思いを見透かすように瞬く光が
眩しいほど尊いことに改めて気付かされる
生も、死も









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