PIANOMAN/……とある蛙
 
もの悲しい口笛のイントロ
ブレイクのアルトサックス
異邦人の生まれ故郷のニューヨーク
そこから彼の歌が始まる

彼の歌は哀しい
生まれ故郷の大都会で
鳴かず飛ばず
鬱病になって病院へ
そのまま挫折して
名前を変え 西部まで逃げ込んだ

「なぁ ビル」

安酒場のピアノ弾きで
明日をも知れぬ、その日暮らし

ジントニックの息の親父が
ピアノの傍らで呟く

「あの時の歌を演ってくれ、
あの哀しくて美しい歌を」

仕事帰りの一杯で
そのままねぐらに潜り込む

彼はそれでも愛されて
哀しい歌を歌い続けた。

彼の歌は美しい
人とのつながりを大事に
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