高射砲塔のある街/高原漣
 
そちこちで鐘がなる

それは時を告げる鐘

そちこちで鐘がなる

それは空襲を告げる鐘

高射砲塔(フラックタワー)は天を仰ぐその腕を

空征く侵略者へと伸ばす

鐘の音と探照灯の光芒が唱和し

闇夜に浮き上がる銀色の巨鯨

さあ、いまこそ仮面舞踏際は始まる

招待されなかった人々はそれぞれの穴倉で息を潜める

緋色の花が天空を舞う

ハナビ、という東洋の

空中芸術があるそうだが

これは迎撃術であり

祖国は死国となり

いまや赤く燃え上がる火薬庫は

真っ赤に光り轟き叫ぶ

曳光弾が光って唸る

低空で侵入した護衛機が

爆装してきていたのか

高射砲塔は舐めるように殴られる

爆弾の雨に

二十五番 と日本ではいうのだろうか

250キロの弾体は古城を改造した高射砲塔のうえで

楽しそうにはじけ

沈黙した砲塔がひとつ、ふたつ

いつしか鯨たちは西の空に消え

街に静寂の帳がもどる

静かに静かに悔恨に満たされる

負け犬どもの高射砲塔がこの街にある。

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