蔵のカノン/月乃助
出すたびに、うれしくなるような。
(( 私たちは、ここまできたのですね。
(( ええ、でも まだ、まだ、終わりはさきのことらしい、
笑うでもなく、泣くでもなく、ただ、語らう
石の壁は、ぼろぼろの
それでいて ぬくもりの和の石
ざらざらとした その肌で
女たちの 静か過ぎる声を聞いている
ひとりは、もう
今では膝をたて 砂漠に住まう」緑の目をした女のように
自由に
話に夢中になっている
陽にさそわれ、
重い鉄の扉をひらけば、
息を継ぐ間もなかった 昨日までの時の星雲たちが 蔵から流れだす
光があふれる。
しばらくの間
四角ばった陽の影でそれをみていた
遠くに
六月の
雨の気配が あるらしかった
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