蔵のカノン/月乃助
 

薄暗がりのはしで
懐かしさが、青白い銀河をささえている
女がふたり うずくまるように
時の欠片をひろっては、ひとつ ふたつ
蔵の闇の星空に ちいさくなげる

思い出たちは、ひととき
星雲の光をはなち
ほんのわずか そこにとどまり すぐに
消えていく

蔵のすみでは、ほこりをかぶったガラクタたちが
幽霊のように静かに出番をまっている

二人は、おなじ 紫の衣に
金糸の刺繍の襟

違いすぎる道をあゆんできたというのに、

(( 波のうねりが、あった。

  (( ほんとうに、たくさん。

(( 花の香る季節もやってきた。

  (( ええ、思い出す
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