無口な男爵/無限上昇のカノン
 
男爵は いつも無口で
広いとはいえない 館の庭で
空を見上げて過ごしている
男爵は いつもひとりで
社会情勢にはまるで無関心
話しかけても 退屈そうにまばたきするだけ

男爵の世界はとても狭くて
館と庭が彼のすべて
家庭教師はとっくにクビにして
政治経済には興味がない
男爵の庭には出口がないから
世の中を知る必要もない


男爵の気持ちが ほんの少し 分かる気がする
足掻いても逃げ出せないなら 知らない方が幸せ
社会は男爵を軟禁して 自分たちの正義を振りかざしているけれど
男爵に睨まれることを恐れている
だけど 証言台に立っても男爵は何も言わないと思うよ

そんな男爵だから 私は側にいるんだ



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