ありがとう (追悼、ではなく)/白糸雅樹
眠られぬ真暗な部屋で音もなく携帯電話の液晶光る
訃報ってなんだかいつも手触りがないから涙はその時来ない
「食い逃げだ」今日の私は言われそうもしも船橋まで出かけたら
間に合わぬことがあるよと告げられて言葉は不意に溢れ始める
言挙げに似たる惹句の朗読会それでもすごく行きたかったよ
仕事場は梯子の上と言いながら地面に足が届いてるひと
霜月の末の日記に『この時期は「喪中につき」との知らせも届く』
言わないで『2004は好きだった中島らもがなくなった年』
違うでしょ違うでしょほら表札が今年はあなたの逝く年じゃない
いつだってもっと聞けると思ってたごめんな
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