今宵 夜空には釘の音が響きわたり 〜追悼・武力也〜/服部 剛
 
いつかあなたが送ってくれた風の便りは
愚直に曲がった目に滲む文字で語られていた

あなたが求める
友愛と平和を・・・
その冬の暖炉を思わせる声で

もっと語ってほしかった・・・
もっと詩(うた)ってほしかった・・・

路地裏の隅で北風に吹かれながら
マッチを煉瓦(れんが)の壁にこする少女に

交差点で目を閉じて立ち止まり
風向きを探している青年に

自棄酒(やけざけ)を浴びて
路上に嘔吐して眠る
青白い夢見顔のリストラ中年に

独り暮らしの家で
日がなこたつに足を入れたままの老婆に

冬の澄んだ星空へと吸い込まれる
長い長い{ルビ梯
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