対話/蒲生万寿
鳥と話そうとする者がいた
鳥は陽気にさえずり明るく応えた
石と話そうとする者がいた
石は沈黙したまま
ただその表面に瑞々しい苔を宿らせ
思いを告げていた
森と話そうとする者がいた
森は包み込むように靄を漂わせ
時折それを吹き流す風は
「すでに受け入れている」と知らせていた
空と話そうとする者がいた
空は何処までも青く遠く広がり
ありったけの意味を述べていた
星と話そうとする者がいた
無数の星は光を放ちながら空間に散らばり
語り尽くすまでその輝きをやめようとしなかった
土と話そうとする者がいた
土は「分かっている」と
常に足元で囁いた
海と話そうとする者がいた
海は動と静の何たるかを
もっぱら一方的に話した
自分と話そうとする者がいた
「言葉はたった一つのことを語るためにだけ必要であり、
それ以外のことは皆、消え去る」のだと
一つのこととは何だろうか?
それを話そうとする自分がいた
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